tsuneメモ

読書・勉強メモ、思いついたこと、普段の日記など。

読んだ本 vol.3 (2024/1/14 - 2023/3/21)

ここ最近は結構読んでる気がする。

積読もそれに伴って加速していて、結局のところ積読消化に至らないというジレンマ。

 

 

☆☆☆ 薬物とセックス / 溝口敦

  • 友人に薦められた。自分じゃ絶対手に取らなかった本。
  • 有名人のやっちまった話が幕開けで爆笑した。
  • 全体的に週刊誌っぽいノリだが、3章4章など一部は薬理学・経済学的な説明があって面白い。「アンフェタミン」という成分名だけ覚えた。

目次

第1章 なぜカップルで使うのか?
第2章 覚醒剤とセックスの関係は?
第3章 薬物の闇ビジネスはどうなっているか?
第4章 なぜコカインは高級品なのか?
第5章 暴力団との関係は?
第6章 廃人はいかにして作られるか?

 

★☆☆ アンドロイドは電気羊の夢を見るか? / Philip K. Dick

  • 現代SFの名旗手と謳われたPhilip K. Dick。こちらもこの作家が好きな友人がおり薦められた。とても面白かった。
  • 設定が奇抜すぎて脱帽。廃惑星と化した地球に住む主人公。移住先である火星から逃亡してきた奴隷アンドロイド。彼らを狩って懸賞金を稼ぎ、社会的ステータスである「生きた動物」を飼うことを夢見る...
  • 「ディック感覚」と名前がつくほどの現実が崩壊していく感覚を存分に味わえる。生命の境界、自己と他者の境界が曖昧になる感じが非常に良い。何が信じられて、何が信じられないか。
  • 著者が薬をやっていたことがおそらく関係して、精神病弱なキャラクターの語り口には独特の歪さがある。

 

★☆☆ だれが原子をみたか / 江沢洋

  • 「サピエンス全史」で科学史への関心が高まり、本書をチョイス。
  • 物理オタクとしては初めにBrown運動を持ってくるという構成だけで興奮した。
  • 物質は原子からできており、原子は原子核と電子から成る、ということを当たり前に飲み込んでいるが、人がそう信じるようになったのはいつからか?何をきっかけに信じるようになったのか?を掘り下げていく。
  • Borle-Charlesの法則に始まり、Gay Lussacの気体反応の法則、エネルギー等分配則、そしてBrown運動。歴史の中で発生した反論が紹介され、どこで矛盾が起こるかを読者に考えさせようとする。
  • 自分たちで歴史の追実験をした報告も載っている。現実世界には普遍の(=いつでもどこでも同じ)自然法則が実装されており、それを理論として抜き出しているんだという感覚を、ある程度の手触りを以て感じられる。また実際に水銀柱で大気圧を測るにはどうやって実験系を組めば良いか。理論を実証するために実験系に落とし込む過程はエンジニア的にも参考になった。
  • 途中、科学哲学にも触れられている。Francis Baconにより、実験や観察に基づいて一般法則に帰納的に辿り着くべきだという主張が、17世紀という早い時期になされたことはかなり意義深かったんだろうと思う。

目次

第1章 ブラウンの発見
第2章 原子論のはじまり
第3章 大気と真空
第4章 気体の構造
第5章 反応する分子
第6章 とびまわる分子
第7章 分子の実在

 

★★★ やがて君になる 佐伯沙弥香について / 入間人間

  • やがて君になる」は僕が最も好きな作品であり、スピンオフ小説も読んでみたいと思った。
  • 入間人間さんは「安達としまむら」などで知られる百合小説作家。
  • 最高。素晴らしい。
  • 言い回しというか感性というか、そういうものが自分と完全に合ってた。自分が物事に対して感じる感覚を、そのままの形で文章に落とし込んであって。原作に負けず劣らず、心情描写とはこういうものかとつくづく納得させられる。
  • どのページを開いても好きな行が見つかる。
  • (1) p9 傲慢なことを言うなら、自分ができる人間なのだと早々に知った。この場合のできるというのは、努力を重ねれば成果が出るということ、そしてその継続ができるということ。その二つの価値と意味を、私は他の子より早く理解したのだと思う。
  • (2) p91 「燈子。あなたは、美人よ。」この際だからはっきり言っておく。なにがこの際なのかは正直分からない。
  • (2) p135 「高いものを取ろうとしてずっと上を向いていると、変に見えるから......かもしれないわね」そして周りに少し笑われるだけで、夢は萎んだりしていくものだ。だからその胸の内を明かせると思える相手がいるなら、それはとても幸せなことだと思う。
  • (3) p9 感情の回転率がいい、と彼女は言った。
  • (3) p125 一度失敗すると、変に賢くなって臆病になる。祖母が以前、そんなことを言っていた。今の私はまさにその通りで、だけど。賢くなることはきっと、悪いことじゃない。
  • (3) p165 足を止めると、追いかけてきた熱気が距離を詰めるように一斉に私を包囲する。走り抜けたことを、ほんのわずか後悔するほどには。
  • 入間さんの他の小説も読みたい。そう思っていくつか積んだ。

 

★★☆ 好き好き大好き超愛してる。 / 舞城王太郎

  • 六本木の「文喫」というお店にヨルシカ展を見に行ったときに出会った。
  • この本もスーパーめちゃくちゃいい。先ほどの入間さんが「感覚」をそのまま文章に落とし込んだ感じなのと比較すれば、舞城さんは「思考」をそうしているように感じる。
  • だから結構めちゃくちゃで夢を見ているような感じ。けどその中にポッと光る道標のような言葉が散りばめられている。

p44 「友達とはこうするもの」という意識は「こうしておけば友達として間違いがない」という気分も作り、そうするとなにか相手に手を抜いているような(手を抜かれているような)気分になって、いかにもその「友達」や「友情」が偽物めいて感じられてしまうんだろう。

p121 「あんたのこれまでの六人があんたとうまくいかなかったの、あんたが六人も七人もイヴを作るような人間だったからじゃないの?皆何となくあんたのそういうのに気づいてて、それで、ちゃんと生き延びてけるくらいにあんたとうまくやれなかったんじゃないの?」

p161 人は心臓が止まったり脳が動かなくなったりして死ぬんじゃない。死はもっと、誰かが思ってるよりもずっと緩やかに始まり、終わるのだ。

 

☆☆☆ 雪国 / 川端康成

  • 僕は自分が思っているよりも日本人なんだと最近自覚した。それで日本文学にももっと親しみたいと思って最初の1冊にチョイス。
  • のだけれど、めちゃくちゃ難しかった。暗黙の了解みたいなのがめちゃくちゃあって、170ページしかないのに500ページくらい読んだ気分。当時とは常識も違うし、知らない言葉ばっかりで、今の自分では味わいきれてない。
  • レベルアップしたら再戦する。

 

★★☆ 人間失格 / 太宰治

  • 日本文学2冊目。
  • 自殺未遂をたびたび繰り返し、最後には入水自殺を遂げた太宰。その間際に執筆された。とにかく文章が暗い。
  • 何だか悔しい気分になる。納得できることが結構書かれているから。

p100 ああ、人間は、お互い何も相手をわからない、まるっきり間違ってみていながら、無二の親友のつもりでいて、一生、それに気付かず、相手が死ねば、泣いて弔詞なんかを読んでいるのではないでしょうか。

  • でもだからといって腐って自暴自棄になって巻き込んで、それでいて表面上は器用に取り繕えるから羨ましいほどの幸せが寄ってきていて。それが許されるような過去を経ているわけだけど... 上手く文章にならない。
  • 自分が恵まれていることを認めるのが難しいとか、結局人は本当のところで分かり合えないとか、そういう気持ちを分かちあうことでも他人とは真に繋がれるはずだと、僕は信じたい。

 

★☆☆ それからはスープのことばかり考えて暮らした / 吉田篤弘

  • これも友達に勧めてもらった。
  • 幸せが充満していた。
  • 何気ない日常。ほんのりと憂鬱や悩みを抱えたり、何かに打ち込んだり、ちょっとぶつかったり。幸せと聞いてパッと想像するようなハレの幸せではなくて、身の回りを流れるケの幸せが魅力いっぱいに描かれていた。

p142 が、〈トロワ〉で働くようになって、店先で直接お客さんと顔を合わせているうち、仕事というのは誰かのためにすることなのだと当たり前のことに思い至った。

p265 何も起こらず、何も動かず、何も変わらないのに、それでもやはりうつろいゆくものはあって、動かないものとうつろいゆくもののあいだで、無力な町の人たちは、しばしば迷って言葉を失う。

 

☆☆☆ じぶん・この不思議な存在 / 鷲田清一

  • 高校生の国語の授業で使った本。自己と他者について考えたくて掘り起こした。
  • 当時の僕は、この本に書いてあることを自分ごととして捉えるという発想が出てこないほどには、遠い世界の話だと思っていた。
  • 一貫して本書の主張は下記の通り。

p104 わたしたちの自己理解の構造を分析したり、あるいはじぶんの内部をのぞきこんで、じぶんのどういう特質がほんとうのじぶんなのだろうかと考えても、たぶん答えは出てこないだろうと思う。じぶんとはなにかと問うて、じぶんが所有しているもの、他人になくてじぶんだけにあるものを求めても、おそらくじぶんは見えてこない。

  • 自分探しみたいなものから抜け出すには良いヒントだと感心する一方、他者との関わりをコントロールしようと考えてしまう自分はではどう捉えれば良いのか。そんなことを思い浮かべた。
  • にしてもこれを高校生に読ませていたあの先生は結構いい性格をしていたんだなと思う。他に読まされた本も「キッチン」「こころ」「塩狩峠」とかで尖り散らかしたチョイスだったなと。今喋ったらめちゃくちゃ楽しそう。

目次

1 爆弾のような問い
2 じぶんの内とじぶんの外
3 じぶんに揺さぶりをかける
4 他者の他者であるということ
5 「顔」を差しだすということ
6 死にものとしての「わたし」

 

関連記事

tsune71079.hatenablog.com

tsune71079.hatenablog.com